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思い出

2008 - 10/04 [Sat] - 00:00

10月4日(土)

昔、両親とボクがこの土地に移り住んでまもなく、ボクがまだ中学生のころだった。

ある日、学校から帰ってきて玄関を開けると一匹の犬がつながれていた。

「どこの犬だろう?」 来客の飼い犬かと思った。

真っ白く毛の長い可愛い犬だ。

その犬はボクを見るなり嬉しそうにシッポを振り回しながら飛びついてきて、

ボクに嬉ションをひっかけた。

「わっ!」 ボクの声で母が家の奥から出てきた。

「どこの犬?」

「お父さんがねぇ・・・どっからかもらってきたのよ・・・」

「子犬なの?ウチで飼うの?」 嬉しくて心が躍った。

「お父さんに聞いてごらんなさいな・・・」

母は迷惑そうに眉を寄せながらそういった。


ものごころが付いたときから、ウチには犬がいた。

父はボクの幼稚園の入園式に、前夜から産気づいた犬のお腹を一晩中撫でて

とうとう式に来なかったと、不満タラタラに母が言うのを何度か聞いたことがある。

幼い頃、こげ茶色の秋田犬がいて、その後にひと回り大きくて白い秋田犬がいた。

不思議にその犬たちが死んだという記憶がない。

白い秋田犬は小学校3、4年生ぐらいのとき、知らぬ間にウチからいなくなっていた。

ずっと後に父から「譲った」と聞いた覚えがあるが、父も母も他界した今となっては

確かめるすべがない。

その秋田犬をもっぱら朝夕の散歩に出していたのは母だった。

今思うと、父がどこからか白い犬をもらってきたとき、母がなぜ迷惑そうな顔をしたのか

わかるような気がする。


白い犬はジョンと名付けられた。

成犬で10kgぐらいに成長した中型犬だった。

父も詳細を聞かずにもらってきたらしく、スピッツとマルチーズのMIXではないか

と言っていたが、それにしては体格が大きかったような気がする。

ジョンは子犬のうちは玄関につながれていたが、3ヶ月ほどたって父が器用に

ジョンにとてもよく似合う白い犬小屋を作ってやって庭に移された。

外に出されたジョンは家族の姿が見えないと寂しそうに鳴き続け、根負けした父は

せっかく作った犬小屋を放棄して、ジョンをウチで初めての室内犬にした。


それからウチの中はジョン中心になった。

ボクのことを名前で呼んでいた両親は、ボクを「あんちゃん」と呼ぶようになった。

ボクも両親のことを、とうちゃん、かあちゃんと呼ぶようになり、そのうち近所の人

からは「ジョンのお兄ちゃん」と呼ばれるようになった。

高校に進学したボクは、新しい友人に「兄弟いる?」と尋ねられると

「うん、弟がひとり」と平気で答えていた。


数年後、ジョンにお見合いの話が来た。

同じ町内に住む、色が茶色だがジョンによく似た容姿のメス犬を飼うお宅から

申し入れがあったらしい。

「ジョンに似た白い子が生まれたら一匹もらおう」 父はそう話していた。

お見合いは成功し、やがてジョンの子供たちが生まれた。

一匹だけジョンに似た真っ白い子犬が生まれたが、先方がどうしても白い子は

手放したくないと言うので諦めた。 父はジョン似の子犬しか飼う気がなかったので

他の子犬を貰うことはしなかったが、しばらく白い子犬のことを残念がっていた。

それから1年ほどたった頃だろうか。その家がジョンの白い子を飼いきれなくて

手放したという噂を耳にした。 真偽は定かではないが、保健所に引き取らせたと

いう噂もあった。 

父は激怒し、「二度とジョンに子供は作らせない」 と酔っ払いながら怒鳴っていた。

ボクはその頃保健所に引き取らせることがどういうことか理解していなかったが、

今は当時の父の気持がよくわかる。


月日がたち、ジョンが十数回目の予防接種を受けたとき、長年犬を大切に育てたとして、

父は市の動物愛護協会から表彰された。

父は今さらながらジョンが年老いたことに気づき、翌年からジョンが大嫌いな注射を

受けさせるのをやめてしまった。

そんなにジョンを可愛がっていたのかと感心したが、

「ジョンが死んだら剥製にする」と言い出したため、家族からひとでなし扱いされた。


ボクは結婚して家を出ていたが、街中の生活に慣れなかったせいもあり、

長女が1歳のとき海のそばの実家に戻った。

ジョンはすっかり老い衰え、オシッコのとき片足をあげられなくなっていた。

オシッコも頻尿になり、外でトイレを済ませていたジョンは夜中に何度も鳴いて

母を起こすようになっていた。

目も弱り耳も遠くなっていたが、夜遅く帰宅するボクを気配と匂いで感じ取り、

夜中でもシッポを振って玄関まで出迎えてくれた。


実家に戻って間もなく、次女をもうけた。 

家内は家の近くの病院で出産し、産後しばらく長女と実家に帰る予定だった。

出産予定日の1ヶ月前、体調を崩した家内は大事をとって入院した。

家内が明日退院することが決まった日、秋雨がしとしと降る夜だった。

深夜、ジョンに起こされた母はいつものように玄関を開けてジョンをトイレに出した。

いつもは玄関先でさっさと用を足して戻ってくるのに、この日は玄関を出ると一目散に

夜の闇の中に走って行ってしまったそうだ。

母はしばらく待っていたが、ジョンが一向に帰ってこないので、傘を片手に探しに出た。

どこにも見当たらず困った母は、家に戻って父を起こした。

父も雨の中近所をひと周り探したが、とうとうその夜ジョンは戻ってこなかった。


ボクは翌朝この事件を聞いた。

変だなと思いながらも大して気にせず会社に出勤した。

この日は退院する家内を迎えに行くため昼前で早退して昼ごろ家に帰った。

家のそばで長女をおぶった父とすれ違った。ジョンを探しているのだという。

「まだ帰ってこないのか?」 さすがに少々不安になった。


家に帰ると同時に電話が鳴った。 家内の病院からだった。

「先ほど奥様が分娩室に入られましたので、至急病院までお越しください」

何で退院するはずの家内が分娩室に入っているんだ?

慌てて外に出て長女をおぶった父を捜しまわり、みんなで病院に行くから母を

探してくるように頼んだ。

家に戻って両親が戻るのを待っていたら、再び電話が鳴った。

「お生まれになりました!元気な女の子さんです!」

なんと!さっき電話を取ってから30分も経ってない!

犬のお産をはるかに上回るスピード出産だった。


この際、両親など待っていられない。 クルマに乗り込みエンジンをかけ、

今まさに発車しようとしたとき、両親が長女をおぶったまま戻ってきた。

「生まれたって!早く乗って乗って!」


病院に着いて家内に事情を聞くと、荷物をまとめて入院費の精算を待っていたら

急にお腹が痛くなって、そのまま分娩室に運ばれたそうだ。

何で早く来ないのよ!と文句を言われたが、こらえ性がないのといい勝負だ。


両親と一緒に生まれたての赤ん坊の顔をニヤニヤして眺めていたら、

病院の人から「〇〇さんという方からお電話がはいっています」 と呼びだされた。

ウチの裏に住む漁師の人だ。 母が電話に出た。

母は電話から戻ってくるなり、「ジョンが見つかったって!」 と言った。

病院に来て10分もたっていないので、家内に申し訳ない気がしたが、

「すぐ戻るから」 と詫びて長女を病院に残し、両親と家に戻った。


電話をくれた漁師の家を訪ねると、変わり果てたジョンがバスタオルにくるまれて

段ボール箱に納められていた。 身体がしっとりと濡れている。

漁師さんの話を聞くと・・・


早朝、漁に出るとき港に白い犬が浮かんでいるのを見かけた。

漁から戻るとウチの犬が行方不明で朝から探し回っていることを家族から聞き、

もしやと思って港に戻ったがもういなかった。

引き潮で沖へ流されたのだろうと思い、わざわざ船を出して沖まで何往復も走り回り

見つけだしてくれたのだ。

ジョンを引き上げて港に戻り、ウチを訪ねたが留守だった。

漁師さんが家に戻ると、ボクが「生まれた生まれた」と叫んで家族と一緒にクルマで

出かけていったと耳にしたので、わざわざ病院に電話してくれたそうだ。


なぜジョンが漁港まで行ってしまったのかわからない。

目がよく見えない上に雨で匂いもよく嗅ぎとれなかったのだろう。

漁港の岸壁から足を滑らせて海に落ちたらまず這いあがれない。

苦しかったろうと思うと涙が止まらなかった。

母は悔やんでも悔やみきれなかったに違いない。


再び病院に戻ると家内が「ジョンは?」と尋ねた。

首を振りながら 「港に浮かんでいたらしい」とだけ答えるのが精一杯だった。


その夜、新しい家族が生まれたというのに家の中は通夜のようだった。

両親もボクも何度も玄関に置かれた段ボールのそばに行きジョンを撫でた。

そして泣いた。


翌日、保健所に電話してジョンの亡骸を引き取りに来てもらった。

保健所の係りの人が段ボールごとジョンを運ぼうとすると、2歳になった長女が

ダメー!と泣いて段ボールにしがみつき、再び家族の涙を誘った。





あの日生まれた愛娘が、この日15歳の誕生日を迎えた。

まだまだ子供だが、大きな病気ひとつせず育ってくれたことに感謝している。

娘にとってイヴとロイの生活がどんな思い出に残されていくのだろうか。



ボクの想い出のジョンの、現存するたった一枚の写真である。
ジョン





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三浦半島西海岸で、妻と二人の娘とアメリカンコッカースパニエルのイヴ&ロイ&ルイと暮らしています。

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